2025.10.23

根管治療後の痛みについて〜痛みは消えるのか?消えない場合の原因とは〜

根管治療とは?-歯の神経の治療-

虫歯が進行すると、歯の内部にある神経や血管の束(歯髄 – しずい -)が細菌に感染し、炎症を起こして激しい痛みを生じることがあります。

根管治療では、感染した神経を取り除き、根管の内部を丁寧に洗浄・消毒して、再感染を防ぐために薬剤で密閉します。

根管は非常に細く、複雑に枝分かれしているため、根管治療は歯科治療の中でも特に精密さが求められる、難易度の高い治療です。

精密根管治療で「歯の中の痛み」は取り除ける

当院の精密根管治療では、CTで3次元的なレントゲンで根管の形状を把握する、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)で歯の内部を最大20倍以上に拡大して治療するなど先端的な医療技術をとりいれ、肉眼では見えない部分の感染源を確実に取り除きます。

これにより、精密根管治療では歯の内部が原因で生じている痛みは、高い確率で取り除くことが可能です。実際、当院で初回治療(抜髄)を行った患者さんにおいて、術後6ヶ月以内に歯の中の痛みが残ったというケースはありません。

しかし、これからご説明するような理由で、精密根管治療をした後も歯の痛みが残ってしまう可能性があります

それでも痛みが消えない5つの原因

「虫歯が深くて神経を取ったのに痛みが消えない」というお悩みで来院するセカンドオピニオンの患者さんはとても多く存在します。このように根管治療後も痛みが続いてしまう場合は、歯の中(根管)ではなく歯の外に原因があります。

原因1:神経の損傷

根管治療の過程で、歯の根の先端部分にある歯根膜(しこんまく)という組織の神経に強い刺激が加わると、神経が傷つき、傷ついた複数の神経が絡み合って痛みを増幅してしまいます。この現象をエファプスと呼び、反対側の歯と接触するだけで鋭く刺すような痛みが発生します。そのため精密根管治療が成功して歯の中がきれいになっても、咬んだ時などに痛みを長期間感じるようになります。

原因2:残髄(ざんずい)

抜髄治療の際に1本でも神経の取り残しがあると異常な形で再生してしまうことがあります。これをスプラウティング(発芽)と呼びます。
通常の神経線維はミエリン鞘と呼ばれる覆いで保護されていますが、スプラウティングを起こした神経にはミエリン鞘が存在しないため、痛みの感受性が高まり 、場合によっては外部からの刺激がなくてもチクチクとした痛みが生じます。

原因1、2は「神経障害性疼痛」と呼ばれ、帯状疱疹の後に皮膚の痛みが長く続く「帯状疱疹後神経痛」と同様のメカニズムです。一度この状態になると、痛みのコントロールが難しくなり、難治性歯痛と呼ばれています。

どんな時にスプラウティングが起きる?防ぐためには?

スプラウティングは体内の成長因子の働きによって取り残した神経から発芽します。精密根管治療では1回目の治療で十分な時間をかけて神経を全て取り除き、適切な薬剤を貼薬(ちょうやく)することでスプラウティングを防ぎます。ひとたびスプラウティングが起きると、違和感や痛みが消えにくくなるので1回目の治療がとても重要です。

原因3:感作

痛いからといって、原因不明のまま根管治療を繰り返してしまうと刺激に対する感作が起こり、少しの刺激に対しても大きな痛みを感じてしまうようになります。

原因4:非歯原性歯痛

歯が痛いと感じていても、実は原因が歯そのものではない場合があります。これを非歯原性歯痛といいます。原因として最も多いのが筋膜痛ですが、精神的な不安が痛みを招く場合もあります。

  • 筋膜痛:食いしばりや歯ぎしりが原因で顎の筋肉が凝る(固くなる)と、関連痛として奥歯の痛みを引き起こすことがあります(異所性疼痛)。
  • 心因性歯痛:神経障害性疼痛などが長引くことによって続く不安感で、自律神経系をつかさどる大脳の一部に痛みの情報が蓄積して、原因がなくなった後も痛みが続きます。

これらの場合、歯の治療をするだけでは痛みは改善されず、難治性歯痛の専門医によるアプローチが必要です。

原因5:根管治療の限界

感染した根管には100万を超える細菌がいるため治療で全て除菌・殺菌することは不可能です。精密根管治療はそれらの細菌を一定数以下に減らした後に、根管充填材で生き埋めにすることで病変を治します。
しかし枝分かれした根管内の細菌が再増殖したり、歯根の外側に感染(バイオフィルム)が広がっている場合は、歯の根の先で再び炎症が起き、痛みや腫れの再発原因となります。
当院では顕微鏡を使った精密根管治療を行った後も状況に応じて病変の経過観察を行い、予後が悪い時には外科的歯内療法を行います。

痛みが続く場合の当院の対応

痛みは、ご本人にしか分からない非常につらい症状です。
治療後に気になる痛みがあれば、痛みの原因を丁寧に診察します。
必要に応じて、難治性歯痛専門の医療機関に紹介することも可能です。

橋爪英城

根管治療専門医の紹介

医療法人社団天城会設立 理事長
橋爪エンドドンティスデンタルオフィス 院長
橋爪 英城

・歯内療法 専門医
・根管治療専門医 専門医
・日本歯科保存学会歯科保存治療専門医認定 専門医登録番号710号
・日本大学松戸歯学部専任講師
・デンツプライシロナ公認インストラクター


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当院の根管治療